25.06.04
実家の建て替え、後悔しないための5つのポイント|費用・間取り・親との同居 プロが徹底解説
ご両親、ご兄弟姉妹など、ご家族の中でも大きな決断となる「実家の建て替え」。
家の老朽化や家族構成の変化、将来を見越したバリアフリー化、高齢の親との同居など、建て替えを考える理由はご家庭によってさまざまです。
しかし、実際に建て替えを経験した多くの方々が「思ったよりお金がかかった」「家族の意見がまとまらずトラブルになった」「新しい家なのに住みにくい」など、想定外の後悔を抱えてしまうケースが少なくありません。
そこで今回は、これから建て替えを検討されている方に向け、プロの視点から「実家の建て替えで後悔しないための5つのポイント」を詳しく解説します。費用や間取り、家族との同居、相続や手続きなど、お悩みの多いテーマについてわかりやすくまとめていますので、ぜひ最後までご覧いただき、ご家族の大切な住まいづくりの参考にしてください。
実家の建て替えで後悔する理由とは?
実家を建て替えて新生活をスタートさせても、「こんなはずじゃなかった」という後悔や不満を感じる方は少なくありません。ここでは、後悔につながりやすい代表的な5つの理由について詳しく解説していきます。
予算オーバー
建て替えにおいて最も多い失敗例が「予算オーバー」です。
「最初に想定していた金額で収まると考えていたのに、プランを進めていくうちに費用がふくらんでしまった」というケースは非常に多く見受けられます。例えば、設備のグレードアップや追加工事、外構工事、引っ越しや仮住まいの費用など、見落としがちなコストがあとから発覚し、最終的に大幅に予算を超えてしまうこともあります。
「建て替えは一生に一度のことだから」と、あれもこれもと要望を追加してしまいがちですが、建築費以外の諸費用も含めて「余裕を持った資金計画」を立てることが予算内に収めるポイントです。急な出費や想定外の追加費用にも備え、建て替え後に後悔することがないようにしましょう。
間取り計画の失敗
新居に住み始めてから「部屋が狭い」「動線が悪くて家事効率が悪い」「収納が足りない」といった間取りに関する後悔も多く聞かれます。
一度家が完成してしまうと間取りを変更するのは難しく、高額なリフォーム費用も必要になるため、家づくり初期段階での入念なプランニングが大切です。家族の生活スタイルや将来的な家族構成の変化を十分にイメージしながら、日常の家事動線や家族一人ひとりの過ごし方を具体的にシミュレーションし、収納スペースや部屋の広さ、配置などを検討しましょう。
例えば、キッチンの近くに洗面室を配置する、家族全員分の上着を収納できる大きめの玄関収納を設けるなど、使い勝手を具体的に考えることで満足度の高い間取りに近づきます。
固定資産税の増加
建て替えによって家が新しくなり、延床面積が増えると、以前よりも固定資産税が高くなるケースがあります。特に二世帯住宅や広い家を建てる場合は、毎年の税負担やランニングコストが家計を圧迫する可能性があるため注意が必要です。
「思ったより税金が高くて家計が苦しくなった」と後悔しないためにも、建て替え前の段階で税金や維持費のシミュレーションを行い、長期的に無理のない資金計画を立てるようにしましょう。あわせて、火災保険や地震保険、将来の修繕費などもランニングコストとして計画に含めておくと安心です。
親族間のトラブル
実家の建て替えでは、予算や間取り以外にも、相続や親族間の調整といった人間関係にまつわる部分も大きな課題となります。特に相続人が複数いる場合、家の名義や将来の分け方についてトラブルになりがちです。
家の名義や登記をどうするか、誰がどれだけ費用を負担するか、将来的な相続の際の「代償分割(特定の相続人が不動産を相続する代わりに、他の相続人にお金を支払う方法)」をどうするかなど、早い段階で関係者全員としっかり話し合っておくことが重要です。
また不動産を共有名義にすると、修繕や売却の際に全員の同意が必要になるなど、後々のトラブルにつながるリスクがあるため、注意しましょう。弁護士や司法書士、税理士などの専門家のアドバイスを受けるなどして、事前にしっかり準備しておけば、親族間のトラブルを防げます。
将来のライフプランとの不一致
建て替え後、「子どもが独立して部屋が余ってしまった」「将来の介護に配慮した設計にしておけばよかった」といった声も少なくありません。
短期的な視点だけで間取りや設備を決めてしまうと、家族構成やライフスタイルが変化したときに住みにくさを感じる場合があります。「今」だけでなく、10年後、20年後を見越して、家族構成や生活スタイルの変化にも柔軟に対応できる、可変性のある間取りやバリアフリー設計を検討しておくことが大切です。
例えば、壁の一部を取り外せば部屋数を増減できるようにしておく、廊下や出入口を広くして段差をなくしておくなど、将来の変化に備えた工夫を取り入れることが快適な住まいづくりのポイントです。
実家を建て替える前に考えるべき5つのポイント
実家の建て替えを成功させるためには、事前の準備と計画が大切です。ここでは、建て替え前に必ず押さえておきたい5つのポイントを紹介します。
予算を明確にする
最初に検討したいのは「予算」です。
家の建て替えには建物の建築費だけでなく、既存家屋の解体費用、仮住まい費用、引っ越し費用、外構工事費、登記などの諸費用がかかります。これらをすべて含めて総額でいくら必要なのかを明確にし、「どこからどこまでが建築費に含まれるのか」「追加工事の可能性はあるか」なども事前に確認しましょう。
また、自己資金や親からの援助、住宅ローンなど、資金の調達方法や月々の返済額、将来的に無理なく返済できるかのシミュレーションも欠かせません。金融機関やファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザーなどの専門家に相談し、現実的な資金計画を立てることが失敗を防ぐ大きなポイントとなります。
家族全員で話し合う
建て替えの計画を始める際は、「誰のために」「どんな暮らしをしたいか」を、親世代、子世代、場合によっては孫世代まで、家族全員で明確にすることからスタートしましょう。
家族一人ひとりの要望や不安、今後のライフプランをしっかり話し合い、すり合わせておくことで建て替え計画の土台が安定し、後々のトラブルや後悔を大きく減らせます。
特に、将来的に親との同居や二世帯住宅を検討している場合は、生活リズムやプライバシー、家事の分担、また生活空間をどこまで分けるのかなど、具体的な部分まで事前に共有しておくことがとても大切です。お互いに遠慮して本音を言わないまま計画が進んでしまうと、完成後に不満が噴出することも珍しくありません。
家族会議の時間をしっかり設けて、全員が納得するプランを目指しましょう。
プロに相談する
家づくりには、建築基準法や資産運用、税務、補助金制度など、専門的な知識や経験が必要になります。これらを施主自身で判断するのは難しいため、建築家や住宅会社のほか、資金計画に関してはファイナンシャルプランナー、相続や登記は司法書士・税理士など、それぞれの分野の専門家にも相談するとよいでしょう。
また、専門家によって提案や視点が異なる場合もあるため、複数の相手に相談すると「自分たちの理想を形にしてくれるパートナー」が見つかりやすくなります。
無料の住宅相談会や住まいのセミナーなどを活用し、第三者の意見を積極的に取り入れていけば、見落としがちなリスクにも柔軟に対応できるはずです。迷ったときは必ず専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。
建て替え以外の選択肢も検討する
実家の将来について考える上で、「本当に建て替えが最善なのか?」を今一度見直すことも大切です。
建て替え以外にも、部分的なリフォームやスケルトンリノベーションといった方法があります。また、思い切って実家を売却して住み替える、賃貸として活用するなどの選択肢もあります。
例えば、築年数が浅く構造体が健全な場合は、リフォーム・リノベーションで対応できる可能性が高いでしょう。一方、耐震性が低く老朽化が進んでいる場合などは、安全面を考慮すると、建て替えを検討する方が望ましいといえます。
家族のライフステージや希望に合わせて最適な方法を幅広く検討し、納得したうえで最終的な決断を下しましょう。
必要書類・手続きを確認する
家の建て替えには、書類の準備や手続きが発生します。
中でも重要なのが「建築確認申請」です。これは建築基準法や各種条例に適合しているかを確認するために必須の手続きです。設計を担当する住宅会社が申請するのが一般的で、建て替えであっても新築と同様の期間や手間を要します。
さらに、解体届けや土地・建物の登記変更、名義変更、ライフライン契約の変更、近隣への挨拶など、関連する手続きは多岐にわたります。住宅ローンの減税制度を活用する場合は、確定申告も必要です。また、自治体によっては建て替え時に補助金や助成金が利用できる場合もあります。
建て替えに必要な手続きに関しては、早めに情報収集や専門家への相談を行い、スケジュールや必要書類を把握して計画的に準備を進めましょう。
「建て替えvs リフォーム・リノベーション」どちらがおすすめ?
実家を新しくしたいと考えたとき、「建て替え」と「リフォーム・リノベーション」のどちらを選ぶべきか、悩む方も多いでしょう。ここからは、それぞれのメリット・デメリット、ケースによってどちらがおすすめなのかを解説していきます。
【建て替えのメリット】
・構造から完全に新しくできるため、耐震性や断熱性など現代の基準に合わせた性能の高い家を建てられる。
・間取りを自由に設計できるため、家族の希望を反映しやすい。
・バリアフリーや二世帯住宅など、将来の変化にも柔軟に対応する設計が可能になる。
【建て替えのデメリット】
・費用が高くなりやすい(解体費・新築費・諸経費等がかかる)。
・工事期間が長く、仮住まいの手配や引っ越しが必要になる。
・建築規制や法律の制限がかかる場合があり、希望通りに建てられないこともある。
【リフォーム・リノベーションのメリット】
・既存の建物の構造体を活かすことで、費用を抑えられるケースが多い。
・部分的な工事なら、住みながらリフォームを進めることができる。
・愛着や思い出のある家に住み続けられる。
【リフォーム・リノベーションのデメリット】
・建物の老朽化や構造上の制約で、理想の間取りにできないことがある。
・耐震性や断熱性など、根本的な性能を大きく改善するのは難しい。
・予想外の追加工事費が発生し、結果的に費用がかさむ可能性もある。
老朽化が進んでいるなら「建て替え」、構造が健全なら「リフォーム・リノベーション」がおすすめ
建て替えとリフォーム・リノベーションにはそれぞれ違った良さと注意点があります。
家の老朽化が進んでいたり、家族のライフスタイルが大きく変化する予定があったりする場合は「建て替え」がおすすめです。建て替えなら、ご家族の希望や将来の変化に合わせた設計が可能で、最新の耐震・省エネ基準を満たした安心・快適な住まいを建てられるでしょう。
一方で、建物の構造が健全で、部分的な改修で十分な場合は、費用面や工事期間を抑えられるリフォーム・リノベーションも有力な選択肢になります。ただし、最新の断熱性能や省エネ性を取り入れるのが難しい場合が多いため、長期的には光熱費が高くなったり、快適性の面で新築に劣る可能性があったりする点には注意が必要です。
じっくりと家族で話し合い、必要であれば複数の住宅会社や専門家に意見をもらいながら、自分たちの状況に最適な方法を選びましょう。
親と同居する場合は?成功させるポイント
実家の建て替えを機に、親との同居や、二世帯住宅の建築を検討されている方も多いのではないでしょうか。
同居を成功させるポイントは、「お互いに尊重し合える距離感」と「変化に対応できる柔軟さ」にあります。無理のない範囲で生活空間を分けつつ、家族みんなが安心して快適に暮らせる家づくりを目指しましょう。
親世帯・子世帯が気持ちよく暮らすために、どんな工夫が必要かを詳しく解説します。
プライバシーの確保
同居で最も重要となるのが、家族それぞれのプライバシーをどれだけ守れるかという点です。
例えば玄関や水回り(キッチン・浴室・トイレ)を世帯ごとに分ける完全分離型の間取りであれば、生活リズムが違っていても気兼ねなく過ごせますが、スペースや予算の都合ですべてを分けられない場合も多いでしょう。
その場合は、寝室などのプライベート空間をしっかり区切る、防音性を高める、視線が交わりにくい動線を設計するなど、物理的な工夫でプライベート空間を確保することが大切です。
設計段階で「どこまで共有し、どこを個別にするか」を家族で話し合い、無理のない範囲で快適な距離感を保てる住まいづくりを目指しましょう。
生活スタイルの違いに配慮
親世帯と子世帯が一緒に暮らす場合、お互いの生活スタイルの違いを受け入れることが大切です。例えば、食事や入浴のタイミング、家事の進め方など、日々の習慣は世代によって異なるため、こうした違いがストレスの原因になることもあります。
ストレスを減らすためには、事前に互いの希望やこだわりを話し合い、生活スペースの使い方や家事分担のルールを共有しておくのがポイントです。また、気になりやすい生活音への配慮として、防音性のある建材の採用や生活ゾーンの配置を工夫するなど、設計段階での対策も有効です。
お互いのペースや習慣を尊重し、役割分担や共用・専用スペースをあらかじめ決めておけば、家族全員が心地よく過ごせる住まいにできるでしょう。
将来の変化に対応できる間取り
二世帯同居では、家族構成や生活環境の変化を考慮した間取りが大切です。
例えば、親世帯の高齢化による介護に備え、スロープや手すりの設置、車イスでも移動しやすい廊下幅といったバリアフリー設計をあらかじめ取り入れておくと安心です。
また、子どもが独立した後など、将来の暮らし方の変化に合わせて部屋の用途を柔軟に変更できる「可変性のある間取り」もおすすめです。
こうした設計を採り入れることで、将来的なリフォームの負担を減らし、長く快適に住み続けられる住まいになります。
厚木・海老名・町田での建て替え・注文住宅なら「サラホーム」桜建築事務所へ
実家の建て替えで後悔しないためのポイントを解説しました。
重要なのは、費用や間取り、税金、親族間の調整、将来のライフスタイルの変化など、さまざまな視点から準備・検討することです。ご家族の希望を丁寧にすり合わせ、信頼できるプロの力を借りながら、自分たちにとって最適な住まいを実現してください。
私たち「サラホーム」桜建築事務所は、これまでにお客様のご実家の建て替えや二世帯住宅のご相談を数多く承ってまいりました。家づくりにあたっては、お客様それぞれのご家族に寄り添い、これからの暮らしを一緒に考えていくことを大切にしています。
はじめての建て替えは分からないことや不安がたくさんあるかと思います。どんな些細な疑問でも、お気軽にご相談ください。工事の進め方や資金計画、間取りのアイデア、同居や相続の問題まで、経験豊かなスタッフが丁寧にサポートいたします。
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監修者:髙橋 康征(たかはし やすゆき)
一級建築士/一級土木施工管理技士/CASBEE建築・戸建評価員/インテリアコーディネーター
日本大学生産工学研究科建築工学専攻修士課程を修了し、一級建築士として数多くのプロジェクトを手掛ける。家業の土木建設会社にて宅地造成・エクステリア施工業務を経て、桜建築事務所に入社。住宅分野に限らない幅広い知識による提案や固定観念に囚われない設計が好評を得ている。「ジャーブネット全国住宅デザインコンテスト グランプリ受賞」「2013年2022年2023年2024年LIXIL全国メンバーズコンテスト 地域最優秀賞受賞」など、住宅デザインコンテスト受賞実績を多数保有。