2025.12.02
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平屋に必要な土地の広さは?家族構成別の坪数目安と失敗しない土地選びのコツを徹底解説

平屋の庭で遊ぶ家族

ワンフロアで生活が完結する「平屋」は、世代を問わず人気の住まいです。しかし、いざ検討を始めると「一体どれくらいの土地があれば建つのか?」という点で迷われる方が少なくありません。
上に部屋を重ねる2階建てとは異なり、平屋は横に広がる建物です。そのため、土地の広さや形状を見極めないと「思ったより家が狭くなった」「駐車場や庭が入らない」といった失敗につながりかねません。
この記事では、平屋を建てる上で重要な「土地と建物のバランス」についてわかりやすく解説します。失敗しない坪数の目安もご紹介しますので、土地探しの参考にしてみてください。

平屋を建てる前に知っておきたい「土地と建物の広さ」の関係

スマホを見て疑問に思う夫婦

土地探しで失敗しないためには、まず平屋ならではの「土地の使い方のルール」を押さえておくことが大切です。

なぜ平屋には広い土地が必要なのか?

理由はシンプルです。2階建てと同じ部屋数や広さ(延床面積)を確保しようとすると、敷地を占める面積が単純に2倍になるからです。

例えば、延床面積30坪の家を建てる場合で比較してみましょう。

・総2階建て: 1階15坪 + 2階15坪 = 地面を使うのは15坪
・平屋: 1階のみで30坪 = 地面を使うのも30坪

このように、平屋は「建築面積(建物を真上から見た広さ)」が大きくなります。建物が横に広がる分、同じ広さの土地に建てると、2階建てに比べて庭や駐車場として残るスペースがどうしても少なくなってしまいます。ゆとりのある平屋暮らしを実現するには、建物が広がる分を見越して、土地自体も広く確保する必要があります。

建物の高さが低いからこそ、隣家との距離が重要

もう一つ注意したいのが、日当たりです。平屋は2階建てよりも建物が低いため、周囲が2階建ての住宅街では、隣家の影に入りやすくなります。
もし敷地ギリギリに建ててしまうと、十分な光が入らず、圧迫感を感じてしまうことも。平屋ならではの開放的で明るい暮らしを叶えるためには、建物の広さだけでなく、「影を避けるためのスペース(隣家との距離)」を、2階建て以上に意識して確保する必要があります。

土地選びで無視できない「建ぺい率」と「容積率」とは

建ぺい率と容積率のイメージ図

「広い土地さえあれば大丈夫」と思いきや、実はそうとも限りません。土地には「その敷地に対して、どれくらいの大きさの建物を建てて良いか」を決める法律のルールがあるからです。それが、販売図面に必ず記載されている「建ぺい率(けんぺいりつ)」と「容積率(ようせきりつ)」です。

建ぺい率とは?

建ぺい率とは、土地の広さに対して「建物の1階部分(建築面積)」をどれくらい広げていいかを決める割合のことです。例えば「建ぺい率50%」のエリアでは、60坪の土地があっても、建物は半分(50%)の最大30坪までしか建てられません。
平屋の土地選びでは、以下の2つの視点で広さをチェックする必要があります。

ステップ①「物理的に入るか」を計算する

まずは、生活に必要なスペースが敷地内に収まるかを計算します。

必要な土地の広さ = 建物(希望坪数)+ 駐車場(台数分)+ 庭・通路

【例:30坪の平屋・車2台・小さなお庭が欲しい場合】
30坪(家)+ 10坪(車2台)+ 10坪(庭・外まわりスペース)= 計50坪が必要

ステップ②「法律的に建つか」を確認する

ここが落とし穴です。計算上は50坪あれば収まりますが、法律(建ぺい率)の壁があります。もし「建ぺい率50%」のエリアだった場合、50坪の土地には「25坪」までの家しか建てられません。30坪の家を建てるには、逆算して「60坪」の土地が必要になるのです。

・建ぺい率50%の場合: 30坪の平屋には「60坪」の土地が必要
・建ぺい率60%の場合: 30坪の平屋には「50坪」の土地が必要

「広さはあるのに、制限で希望の家が入らない」という失敗を防ぐため、土地探しの際は坪数だけで判断せず、「この土地に、希望する〇〇坪の平屋は建ちますか?」とプロに確認することが大切です。

容積率とは?

容積率とは、土地に対して「延床面積(1階+2階などの合計)」をどこまで確保できるかというルールです。一般的な住宅地では、建ぺい率よりも容積率の方がゆるく設定されています(例:建ぺい率50%に対し、容積率は100%など)。

平屋は上に部屋を積み重ねないため、容積率の上限に達する前に、より厳しい「建ぺい率」の制限で広さが決まってしまうことがほとんどです。

【家族構成別】平屋に必要な建物の坪数と土地の広さの目安

平屋のLDK

「自分たちにはどれくらいの広さが必要?」と迷ったときは、以下の目安を参考にしてください。国土交通省の指標(誘導居住面積水準)をベースに、駐車スペース2台と適度な庭を確保した場合(建ぺい率50〜60%想定)の、無理なく暮らせる広さを算出しました。

※以下で紹介する土地の広さは、一般的な住宅地(建ぺい率50〜60%)で、駐車スペース2台+適度な庭を確保する場合の目安です。

夫婦2人暮らし(シニア・DINKs)の場合

・建物の目安:20坪〜25坪(1LDK〜2LDK)
・土地の目安:45坪〜55坪以上

■間取りと暮らしのポイント
生活動線をコンパクトにまとめやすく、老後の暮らしも見据えた「終の棲家」として最適なサイズ感です。廊下を極力なくして居室を広く取ることで、20坪台でも窮屈さを感じさせません。LDKと寝室、水まわりを近くに配置できるため、掃除や移動の負担が少ない「楽な暮らし」が叶います。引き戸中心のプランにすれば、将来に備えたバリアフリー対応が可能です。

夫婦+子供1人(3人家族)の場合

・建物の目安:25坪〜30坪(2LDK〜3LDK)
・土地の目安:55坪〜65坪以上

■間取りと暮らしのポイント
家族が自然と顔を合わせるLDKを中心に、収納や個室にもゆとりを持たせられる広さです。パントリーや土間収納といった「+αの収納」を取り入れやすく、物が散らかりにくいスッキリとした空間を維持できます。リビング横に子供部屋や和室を配置すれば、お子様の成長に合わせて「遊び場→勉強部屋→個室」と柔軟に使い分けることが可能。ウッドデッキをつなげて、休日は家族でBBQを楽しむのも素敵です。

夫婦+子供2人(4人家族)の場合

・建物の目安:30坪〜35坪以上(3LDK〜4LDK)
・土地の目安:65坪〜80坪以上

■間取りと暮らしのポイント
家族全員のプライベート空間を確保しながら、団らんの時間も大切にできる広さです。部屋数が増える分、廊下を減らして回遊動線を作るなどの工夫を取り入れたいところです。洗面所と脱衣所を分けたり、トイレを2つ設置したりと、朝の混雑を避ける機能的なプランも実現可能です。コの字型にして中庭を囲むなど、外とのつながりを楽しむプランも人気。子どもたちがのびのびと育つ、ゆとりある住まいになります。

建物以外にもスペースが必要!駐車場や庭、アプローチの広さの目安

庭でお茶をする夫婦

土地選びで「建物が入るかどうか」だけで判断するのは危険です。後から「車が停めにくい」「庭が取れない」と後悔しないよう、建物以外のスペースがどれくらい必要か、具体的な目安を押さえておきましょう。

意外と場所を取る「駐車場」の広さと停め方

車種にもよりますが、一般的に車1台につき約4坪〜5坪(幅2.5m×奥行5.0m〜)は見ておきたいところです。また、確保すべき広さは「停め方」と「土地の間口(道路に接する幅)」によっても変わります。普通車2台を例に比較してみましょう。

・並列駐車(横並び)
間口は約5.5m〜6m必要。出し入れはスムーズですが、土地の幅を大きく使うため、その分建物の配置や間取りが制限されることがあります。

・縦列駐車(縦並び)
間口は3mほどで済みますが、奥行きが10m以上必要。間口が狭い土地でも配置しやすい反面、後ろの車を出すために前の車を動かす手間が発生します。

図面上では置けても、実際には「狭くて停めにくい」というケースもあります。希望台数を無理なく停められるか、住宅会社に現地を確認してもらうようにしましょう。

庭やアプローチ、室外機などのスペース

建物と駐車場以外にも、暮らしに必要なスペースは案外多いものです。もし「建物がギリギリ入る広さ」の土地を選んでしまうと、エアコンの室外機や給湯器を置く場所がなくなったり、隣家との距離が近すぎて窓が開けられなかったりと、住んでから不便を感じる原因になります。

また、道路からの視線を遮る「目隠しフェンス」を設置する場合も、設置スペースが必要です。プライバシーを守り、落ち着いて暮らすためにも、敷地には「建物を建てるための余白」をしっかりと持たせておきましょう。

平屋のメリットを活かす「土地選び」4つの条件

売り出し中の土地

階段のないフラットな暮らしが魅力の平屋ですが、そのメリットを最大限に活かすためには、土地選びが非常に重要です。特に意識したい4つのポイントをご紹介します。

1.日当たりと風通しの確保(南向き・角地)

平屋は2階建てに比べて背が低いため、周囲を2階建ての家に囲まれると影になりやすく、家の中心まで光が届きにくいのが弱点です。
そのため、日照時間を確保しやすい「南向きの土地」や、2方向が開けている「角地」を選ぶのが理想です。もし条件が合わない場合でも、東や西が開けていれば、朝日や夕日を取り込む設計でカバーできる可能性があります。

2. 無駄なく使える「整形地(四角い土地)」

広い建築面積を必要とする平屋には、正方形や長方形に近い「整形地」が最も適しています。
三角形や台形などの「変形地」は、土地の坪単価が安い場合もありますが、どうしても敷地の隅にデッドスペースが生まれがちです。敷地を隅々まで有効活用できるシンプルな形状の土地の方が、希望の間取りを実現しやすくなります。

3.水害リスクが低いエリア(ハザードマップ)

平屋の最大のリスクは、浸水時に2階へ逃げる「垂直避難」ができないことです。万が一の際は、生活空間や家財道具がすべて水に浸かってしまう恐れがあります。検討中の土地が浸水想定区域に入っていないか、必ず自治体の「ハザードマップ」を確認し、過去の被害歴などもチェックしておきましょう。

4.防犯とプライバシーが守れる環境

すべての居室が1階にある平屋は、生活が見えやすいだけでなく、足場を使わずに窓から侵入されやすいという防犯上のリスクも伴います。
土地選びでは、プライバシーを守るために「道路との高低差」や「目隠しフェンスを置くゆとり」を確認することが大切です。しかし、周囲からの視線を遮りすぎると、かえって侵入者が隠れやすい「死角」を作ってしまうこともあります。そのため、完全に奥まった場所よりも「適度に人の目(近隣の目)がある環境」や、「街灯が整備されていて夜でも明るいエリア」を選ぶのが、防犯とプライバシーを両立させるポイントです。

狭い土地でも平屋は建てられる?広さをカバーする設計のコツ

中庭の見える玄関

「平屋を建てたいけれど、予算的に広い土地は難しい」
そんな場合でも、設計の工夫次第で狭さを感じさせない平屋を実現できます。

廊下をなくして居住スペースを広げる

限られた床面積を有効に使うための基本は、廊下を極力なくすことです。玄関からLDKへ直接つながる動線や、リビングを中心に各部屋へアクセスする間取りにすれば、廊下に使っていた面積を居室や収納に回せるため、無駄のない広々とした空間が確保できます。

勾配天井やロフト活用で「縦」の広がりを作る

床面積を広げられないときは、天井を高くして「体感的な広さ」を演出しましょう。屋根の形状を活かした「勾配天井(斜めの天井)」にすると、視線が上に抜けて開放感が生まれます。また、高い天井部分を利用してロフトを作れば、収納スペースや子供の遊び場として活用でき、床面積不足を補えます。

中庭を作って採光とプライバシーを両立

住宅密集地や狭小地で大きな庭を作るのが難しい場合でも、1〜2坪ほどの小さな坪庭や吹き抜けを取り入れるだけで、採光と通風を確保しやすくなります。外側の窓を小さくしてプライバシーを守りつつ、室内の中心部に光を取り込める「外に閉じて、中に開く」設計は、限られた土地でも快適に暮らすための有効な手法です。

「平屋は建築費が割高」になりがち。土地予算とのバランスに注意

土地探しをする夫婦

「平屋は2階がない分、安く建てられるのでは?」と思われがちですが、実は2階建てよりも建築コストがかかるケースが多いのが現実です。平屋は2階建てと同じ延床面積を確保しようとすると、コストの中で大きな割合を占める「基礎(コンクリート)」や「屋根」の面積が2倍近く必要になります。その分、どうしても建築価格(坪単価)は割高になる傾向があるのです。
そのため、「建物が安く済むから、土地は高くても大丈夫」と誤解して予算を組んでしまうと、後から予算オーバーになり、建物の仕様を削らざるを得ない事態になりかねません。土地契約の前に必ず建築会社へ相談し、土地代と建築費を合わせた総予算のシミュレーションをしておくことが重要です。

まとめ|理想の平屋ライフを実現するために最適な土地を選ぼう

平屋の土地選びは、単に「広ければいい」というわけではありません。建ぺい率や土地の形状、駐車スペースの確保、そして将来の暮らしまで、平屋ならではの視点で多角的に検討する必要があります。
特に「この土地に、希望する広さの平屋と駐車場が本当に入るのか?」という判断は、図面上の数字だけでは難しいもの。購入してから後悔しないためにも、土地の契約前に必ず建築会社へ相談し、プロの判断を仰ぐことをおすすめします。
厚木・海老名・町田エリアで注文住宅の平屋をご検討中なら、ぜひ「サラホーム」桜建築事務所へご相談ください。当社では、建ぺい率や道路付けなど、その土地が持つ条件を丁寧に読み解き、最適な建物配置をご提案します。もし敷地の広さに制約がある場合でも、動線の工夫や外まわりスペースの確保によって、平屋のメリットを最大限に引き出すプランニングが可能です。
土地の個性を味方に変え、暮らしやすさと将来の安心を両立した「後悔しない平屋づくり」を全力でサポートいたします。

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監修者:髙橋 康征(たかはし やすゆき)
一級建築士/一級土木施工管理技士/CASBEE建築・戸建評価員/インテリアコーディネーター

日本大学生産工学研究科建築工学専攻修士課程を修了し、一級建築士として数多くのプロジェクトを手掛ける。家業の土木建設会社にて宅地造成・エクステリア施工業務を経て、桜建築事務所に入社。住宅分野に限らない幅広い知識による提案や固定観念に囚われない設計が好評を得ている。「ジャーブネット全国住宅デザインコンテスト グランプリ受賞」「2013年2022年2023年2024年LIXIL全国メンバーズコンテスト 地域最優秀賞受賞」など、住宅デザインコンテスト受賞実績を多数保有。