スキップフロアの「やめたほうがいい」は本当?メリット・デメリットと対策を解説
スタッフブログ2025年07月03日

近年、注文住宅の間取りとしてスキップフロアを取り入れる方が増えています。ただ、その一方で「やめたほうがいい」「後悔した」など、マイナスの声も耳にします。「興味はあるけれど、本当に自分たちの暮らしに合うのか不安」と悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、スキップフロアで後悔する理由、メリット・デメリット、実際の施工事例、後悔しないためのポイントなどを分かりやすく解説します。スキップフロアがご家族の暮らしに合うのかどうか、判断するためのヒントをお届けします。家づくりをご検討の方は、ぜひ参考にしてください。
スキップフロアで後悔する理由|デメリットと対策

スキップフロアには魅力的な点が多くありますが、十分な知識と準備がないまま採用すると、思わぬ後悔や不便を感じることもあります。ここでは、よくある後悔の理由と対策について解説します。
建築費用が高くなる可能性がある
スキップフロアを取り入れると、同じ床面積でも構造が複雑になりやすく、建築費用が通常の二階建てより1~2割ほど高くなる傾向があります。これは、段差を生み出すための階段や手すり、床の補強、構造計算などが必要となるためです。
特に、大きな吹き抜けと組み合わせる場合は、鉄骨や強度の高い木材が必要になり、材料費・施工費がさらにアップします。
ただし、必要以上に大きな段差や複雑な構造を避け、小上がりや階段踊り場を広めに設けた程度の限定的なスキップフロアにとどめるのであれば、コストは抑えられます。計画時には予算や用途を明確にし、施工会社とよく打ち合わせることが重要です。
冷暖房効率が悪くなることがある
スキップフロアは縦方向に空間が広がる分、冷暖房の効率に影響が出る可能性があります。夏は冷気が下にたまり、逆に冬は暖気が上に逃げてしまうため、室温にムラが生じやすく、不快な温度差を感じることもあるでしょう。これは吹き抜けを伴う場合に顕著で、空調機器の台数や設置場所にも工夫が必要です。
対策としては、住宅全体の気密・断熱性能の向上に加え、空気循環を促すシーリングファンや全館空調システムなどの採用をおすすめします。高い住宅性能とセットでの設計が、快適なスキップフロアを実現するポイントです。
音やにおいが伝わりやすい
スキップフロアは空間がつながる開放感が魅力ですが、その分、遮音性や独立性が低く、生活音や会話の声が広がりやすいという面があります。集中力が必要な作業や、プライバシーを重視したい用途には適していません。
そのため、書斎や勉強部屋など静寂が求められるスペースとしての利用は避け、家族の気配を感じながら使えるライブラリーやキッズスペース、趣味コーナーなど、空間の性質に合った用途を選ぶのがおすすめです。においについては、キッチンの換気扇を高性能なものにしたり、換気経路を工夫したりすることで拡散を抑えられます。家具や間仕切りを活用して、音の反響を抑える工夫も有効です。
安全性に不安がある
スキップフロアは段差や階段が多くなるため、小さなお子様や高齢者のいるご家庭では、転倒やつまずきのリスクが高まります。さらに、ペットを飼っている場合も注意が必要です。
対策としては、安全性を高めるために滑りにくい床材や、落下を防ぐ手すりやネットなどを設ける工夫が効果的です。段差の高さや階段の勾配も、ライフステージの変化を見越した設計が重要です。老後の生活や介護を考えた場合にどう活用できるか、事前にイメージしておくと良いでしょう。
使い勝手の悪さを感じる
スキップフロアの用途を明確にしないまま設置した場合、実際の生活では「物の上げ下ろしが大変」「掃除がしづらい」「スペースを持て余してしまう」といった不満が生まれることがあります。加えて、スキップフロアは一般的な間取りに比べて設計難易度が高いため、設計士の力量が、快適性を大きく左右します。動線や収納計画、空間の有効活用など、細かな配慮が不足すると、生活に不便を感じる原因になりかねません。
後悔を防ぐには、スキップフロア設計の実績が豊富な住宅会社に依頼し、十分な打ち合わせを重ねましょう。住み始めてからのメンテナンスや掃除方法も、事前にシミュレーションしておくと安心です。
スキップフロアのメリット

デメリットを感じる部分もある一方で、スキップフロアならではの魅力もたくさんあります。ここでは、主なメリットについて紹介します。
変化に富んだ間取りにできる

スキップフロアの最大の魅力は、一般的な平面プランでは得られない立体感と奥行きです。
床に高低差を設けることで、同じ延床面積でも空間が広く感じられるようになり、視線の抜けや明るさの違いも楽しめます。空間にリズムが生まれるため、家全体がより個性的でおしゃれな雰囲気に。来客にも印象に残る住まいとなり、家族みんなが自慢できる空間になるでしょう。
縦方向を有効活用できる
敷地面積が限られている場合でも、スキップフロアなら高さを最大限に活かした家づくりができます。
例えば、リビングの上部にスキップフロアを設けて書斎や趣味スペースとして使う、下部を収納やペット専用スペースとして活用するなど、発想次第でさまざまな使い方が可能です。天井が高くなることで開放感が増し、自然光や風も家全体に行き渡りやすくなります。
土地の制約を受けにくく、狭小地でも広く感じる住まいを実現できるため、都市部や変形地での家づくりにもおすすめの間取りです。平坦で単調になりがちな平屋にも、程よいアクセントを与えられます。
空間をゆるやかに区切れる

壁や扉で明確に仕切るのではなく、床の高さの違いによって空間を緩やかに分けられるのがスキップフロアの特徴です。家族が集うリビングとキッズスペース、ご夫婦のワークエリアなど、適度な距離感を持たせつつ視線や気配もつながるため、コミュニケーションを大切にしたいご家庭に最適です。
ワンルーム的な広がりの中で、それぞれが落ち着ける居場所を確保できるなど、多様なライフスタイルに柔軟に対応できる点も魅力の一つです。
収納スペースを確保できる
スキップフロアは段差が多く生じるため、その高低差を活かして効率的に収納スペースを確保できるのが大きな魅力です。
例えば、お子様の遊び場をスキップフロア部分に設け、その下部を日用品やアウトドア用品の収納スペースとして活用できます。限られた敷地や間取りでも空間を立体的に使えるため、収納をしっかり確保したい方に適しています。
また、天井高1.4m以下の収納スペースであれば床面積に算入されないことも多く、固定資産税対策としても有効な場合があります。ライフスタイルや家族構成に合わせて柔軟なプランニングができる点も、スキップフロアの大きなメリットといえるでしょう。
傾斜地の場合、土地を活かした家づくりができる
スキップフロアは土地に高低差がある場合や変形地でも、その地形を活かした設計が可能です。無理に土地を平坦に造成する必要がなく、自然な段差を利用することで、コストダウンや空間の有効活用につながります。
また、段差を活かして眺望の良い場所にリビングやテラスを配置できるなど、景観や外部からの視線をコントロールしやすい点も魅力。土地の個性を最大限引き出した家づくりができます。さらに、周囲の環境や隣家との位置関係を考慮して間取りを調整できれば、プライバシー性も向上します。
傾斜地活用のスキップフロアは、個性的な外観デザインや自然と調和した住まいを求める方に適した住まいのかたちといえるでしょう。
スキップフロアの成功事例
ここでは、実際に「サラホーム」桜建築事務所が手がけたスキップフロアの施工実例を紹介します。
【事例概要】
「1階で生活が完結する家」をテーマに設計した住宅。スキップフロアを活かした開放的なリビング、回遊できるランドリールーム、趣味空間を設け、外観は窓を最小限に抑えたシックなデザインに。ご家族のライフスタイルに合わせた設計が特徴のお住まいです。
【スキップフロアを活かした設計ポイント】
LDKの中心にスキップフロアを設け、吹き抜けとつながる開放的な空間を実現。大きな窓がなくても明るく、広がりを感じるリビングに仕上げています。

スキップフロア部分は家族全員が使えるオープンなライブラリースペースに。お気に入りの椅子や本棚を配置し、家族のコミュニケーションの場となるよう工夫しました。

高天井を活用し、ハンモックやこだわりの照明を設置。空間の縦方向の広がりを存分に楽しめるよう設計しています。

階段~スキップフロア下部のスペースはペット専用の空間として活用。無駄なく空間を活用できる工夫を施しました。
スキップフロアを介して1階から2階、さらに吹き抜け沿いの廊下や書斎とも緩やかにつながる設計とし、どこにいても家族の気配が感じられるようにしました。

スキップフロアの段差や空間を活かせば、「趣味に没頭できる書斎」や「ペットが安心して過ごせる場所」といった、家族の気配を感じながら一人ひとりが多様な過ごし方のできる居場所を生み出せます。「つながり」と「適度な区切り」を両立した住まいづくりができる点は、スキップフロアならではの魅力といえるでしょう。
スキップフロアの採用で後悔しないためのポイント

ここからは、スキップフロアを計画する際に押さえておきたいポイントを詳しく紹介します。
用途を明確にする
スキップフロアは「とりあえず設ける」のではなく、「どう使いたいか」をしっかり考えることがとても大切です。例えば、
・子どもの学習スペースやプレイルーム
・家族共有のおうちライブラリー
・リモートワーク用の書斎やワークスペース
・趣味のためのギャラリーやアトリエ
・季節物や備蓄品の収納場所
など、明確な目的を持って計画することで、そのスペースは日常に活かされます。家族全員で用途を相談し、生活になじむスキップフロアを目指しましょう。
将来の生活もイメージする
スキップフロアは、現在は快適に使えても、将来高齢になったり家族構成が変化したりした場合、段差が生活の障害になることもあります。スキップフロアをバリアフリー化するリフォームは簡単ではなく、設計段階で下地補強などを施しても、現実的な対応には限界があります。
そのため、ご家族の将来像やライフステージの変化を十分に考慮したうえで、スキップフロアを採用するかどうかや、間取りや段差の高さについても慎重に検討することが重要です。また、子どもが独立した後には趣味室や収納スペースとしての転用も想定するなど、将来的な活用方法をイメージしてみましょう。
モデルハウスなどで体感してみる
図面や写真では実際の段差や広さ、空間の明るさ、音の伝わり方などは分かりにくいものです。モデルハウスや住宅会社の完成現場見学会などで実際に体験し、「自分たちの暮らしに合っているか」を実際に確かめることをおすすめします。
また、階段の上り下りや動線、家事中の移動、荷物の運搬など、日常生活を想定して動いてみると、改善点や発見にも気付けます。
気になる点があれば、その場で設計士や営業担当に相談してアドバイスをもらうとよいでしょう。
【Q&A】スキップフロアに関するよくある質問

スキップフロアを検討されている方からよくいただくご質問について、分かりやすくまとめました。
固定資産税への影響は?
スキップフロアでよく心配されるのが、課税対象となる延床面積に含まれるかどうかです。
一般的には、天井高や用途(居室か収納か)によって判断されます。天井高が1.4m以下で収納専用の場合は床面積に含まれないケースが多くなりますが、判断は自治体によって異なります。
また、スキップフロアスペースが居室扱いとなる場合は、その面積分、固定資産税が増額される可能性もあります。
計画段階で建築士や建築会社に相談し、申請内容や自治体の判断基準について事前に確認しておくことが大切です。
ダウンフロア・ロフト・中二階とは何が違うの?
空間に高低差をつける手法として、ダウンフロア、ロフト、中二階といった種類があります。これらはそれぞれ目的や特徴が異なり、住まいに多様な機能や表情をもたらします。それぞれの違いを具体的に見ていきましょう。
・ダウンフロア
リビングやキッチンなど住空間の床の一部を10~40cmほど下げ、囲まれ感や変化を演出する手法。フラットな空間とも自然につながりやすく、段差も低めなので安全性も高いのが特徴です。
・ロフト
天井近くに設ける収納スペースのこと。天井高さ1.4m以下に設定し、延べ床面積に含まないのが一般的です。
・中二階
1階と2階の間に設けられる階層で、スキップフロアとほぼ同じ意味合いで使われます。
安全性は確保できる?
スキップフロアは段差を活用した設計であるため、一般的に安全性への配慮が欠かせません。特に小さなお子様や高齢者がいるご家庭では、手すりの設置や滑り止め、落下防止ネットの採用など、段差部分や階段の仕様を慎重に検討する必要があります。
また、スキップフロアは地震に対する強さについて不安を持たれる場合がありますが、構造計画を徹底することで十分な耐震性を確保できます。建築基準法に則った設計はもちろん、必要に応じて耐震等級を高めるなどの対策を講じれば、より安心して暮らせる住まいになるでしょう。
まとめ|厚木・海老名・町田で注文住宅を建てるなら「サラホーム」桜建築事務所へ

スキップフロアは、空間に変化と広がりを生み出し、家族のコミュニケーションや趣味の充実、収納力アップなど多くの魅力があります。一方で、建築コストや冷暖房効率、将来の使い勝手などで注意すべき点もあるため、慎重に検討した上で採用を進めましょう。
今回紹介したように、スキップフロアで後悔しないためには「用途を明確にする」「将来の暮らし方も考える」「モデルハウスで体感する」ことが大切なポイントです。
「サラホーム」桜建築事務所では、お客様一人ひとりのご要望やライフスタイルを丁寧にヒアリングし、デザイン性・機能性・住み心地のすべてにご満足いただける家づくりを目指しています。
厚木・海老名・町田エリアで注文住宅をご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。理想の住まいづくりを、私たちと一緒に叶えましょう。
――――――
監修者:髙橋 康征(たかはし やすゆき)
一級建築士/一級土木施工管理技士/CASBEE建築・戸建評価員/インテリアコーディネーター

日本大学生産工学研究科建築工学専攻修士課程を修了し、一級建築士として数多くのプロジェクトを手掛ける。家業の土木建設会社にて宅地造成・エクステリア施工業務を経て、桜建築事務所に入社。住宅分野に限らない幅広い知識による提案や固定観念に囚われない設計が好評を得ている。「ジャーブネット全国住宅デザインコンテスト グランプリ受賞」「2013年2022年2023年2024年LIXIL全国メンバーズコンテスト 地域最優秀賞受賞」など、住宅デザインコンテスト受賞実績を多数保有。
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